季節の一枚

最近の撮影より


絶滅危惧風景
絶滅危惧風景 《平成30年8月下旬》
先月に引き続き、今月も踏切の作品です。 踏切ならば桑名の石取祭の時の一枚でも良かったのですが、機を逸し早月末。 会心作という訳ではないのですが、月内により良い“何か”が撮れる保証も無し、全国的にも今や相当貴重になった情景を切り取った作品を選びました。
“行き”の撮影時には踏切小屋の影に隠れてしまった踏切番のおじさんには、直後の“帰り”の撮影時には画面内に留まってくれる様(手を掛けているのは操作盤でほぼ通常の立ち位置)お願いしての撮影。 「汽車よりそっち(レンズ)が気になる!」なんておどけた会話を交わしながらの撮影でした。 技術的には、ハレ切りを準備して撮影に臨んだものの、列車通過間際に画角内に太陽が入り込んで来て、構成の大幅な見直しよりも、敢えて気にせず入れ込み被写体のバランス優先で撮影しました。 見方によっては印象的になったとも言えますが、以前所有のレンズと比べ、それ程感じの良いゴーストではないのが、最近のナノクリスタルレンズの欠点と言えば欠点でしょうか。
場所は三重県四日市。 海に面した工業地帯である為、古き良き鉄道時代の産物“臨港線”が張り巡らされ、極一部ではあるもののそれが今なお残っているばかりか、元気に現役路線として活躍しています。 “鉄ちゃん”的には、ここを走る国内唯一になってしまったセメント輸送列車や、これ又ここだけに残る鉄道用としては現役最後の跳ね上げ橋“末広橋梁”等が興味の対象なのでしょうが、今回の目的の中心はここに残るこれ又全国的には異色の踏切。 異色とは言ってもそれはここ最近のお話で、ほんの一昔前まではそれこそ、日本各地にいくらでも残っていた風景です。
東海地方に於いては名古屋市熱田区の御田・神宮前一号踏切が幹線鉄道としては孤軍奮闘の“最後の砦”でした。 並走する東海道線と名鉄、それぞれに踏切番小屋があって、手動の鋼鉄ハンドルを巧みに操ってワイヤー式の遮断機を上げ下げする光景は、何時まで観ていても飽きる事のない、とても絵になる地域の風物詩でした。 全国的に有人踏切での事故が社会問題化した頃に、残念ながらその情景も過去帳入りしてしまっています。
この太平洋一号踏切(旧:小野田一号踏切)の存在は過去何度も確認済みのはずだったのですが、踏切の稼働時刻を知らなかった事もあるのか、末広橋梁の存在感が強すぎたのか、ここ最近何故か記憶から消えてしまっていたのを、たまたま見かけたネット情報が呼び起こしてくれました。
現地にて確認してみると、動力は残念ながら電動式でしたが、張られたワイヤーが線路を潜る仕組み等、見た目は十分懐かしの光景。 子供の頃は国鉄の殆どの駅近辺の踏切はこの様な物だった(引込線や構内入れ替え等があった為と思われる)と記憶しています。 現役の産業遺産として末永い活躍を願うばかりです。
なおこの路線の所属に関して、詳しい調査等は行っていませんが、踏切名にJR貨物と謳っている事から、一般に広まっている太平洋セメント専用線ではなく、旧四日市港駅構内側線とみなして、関連する作品等では紹介しています。 踏切の開閉業務自体は、太平洋セメントの係員がその都度、原付で駆け付け担当しています。


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